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EDR Summit 2020
2020年3月9日から3月11日の3日間、テキサス州ヒューストンにて、
年に1度開かれるEDR Summitに参加しました。
EDR Summit 2020には、全米各地の警察・保険会社・調査会社を中心に、世界中の鑑定人や学者など、約250人ほどが参加します(日本からは法人としては弊社のみ、それ以外は香港籍の大学教授が1名のみです)。
本年の会議は、EDRデータの解析に関する講演がありながらも、昨年のEDRデータを中心とした会議から、 1つのデータへ依存するのではなく、他のデータ(車両に搭載されたデータや外部データなど)を活用し、統合的な車両事故鑑定をどのように行っていくのかという点に、より焦点が当てられた会議でした。
その中では、人間ではなく、機械によって制御されるアクティブセーフティ機能の検証についても議題に上がりました。
EDR関連
EDRに関して、先ず2018年に発売されたCDR900のアップデートが行われました。
日本車においては、2019年中にスバルに続き、三菱がCDR900での抽出が可能になりました。またトヨタは従来のCDRツールでも抽出が可能ですが、CDR900 での抽出も可能になりました(ただし、日本市場においては、トヨタ以外のメーカーのEDRデータの抽出が現在は出来ません)。
また、シボレー・GM・キャデラック・ビュイックについては、CDR900を使用することで、アクティブセーフティ関連項目を抽出できることになりました。日本市場ではアメリカ車の比率がかなり低いことから、なかなかCDR900を活用してのアクティブセーフティ関連項目の確認を行う機会は低いと思われますが…
EDRに関連して、テクニシャン向けにホンダ・アキュラ車からの抽出方法、日産車のハンドル角について、イグニッション回数の重要性、法廷で戦うために必要な対応などについて講演が行われました。
昨年はアメリカ車に関する項目が多かったですが、昨年と比較して日本車に関するトピックが増えたのは、アメリカ車に関する項目はほとんど検証が完了していることが理由と考えられます。アメリカにおいて、アメリカ車の次にシェアを持つ日本車に焦点が当てられてきていると感じるEDR Summit 2020であり、今後、日本車関連の検証が増えていくことが期待されます。
EDR関連以外
EDR関連以外では、当社で昨年導入したBerla iVeによるインフォテイメントシステムの解析、自動運転などの先進運転支援システムや、スバルのアイサイトシステム、歩行者検知機能、また昨年に引き続きトヨタのVCHについてなど、EDRデータ以外に車両に搭載されたデータには何があるのか、それらの活用方法とは…といった議題を中心に講演が行われました。
また、電車管理システムデータとEDRデータを組み合わせた解析といった、車両に搭載されたデータだけではなく、外部のデータも使用した統合解析についても講演が行われました。
EDRデータは衝突前後5秒ずつのデータしか記録されず、事故全体を解析するにはある程度の制限があります。そのため、アメリカでは、 EDRデータ以外の車両に搭載されたデータや外部のデータなど、信頼に足る多方面からの情報を相互補完的に事故解析の証拠として積み上げるといった、統合的な解析へとシフトしている印象を受けました。
EDR関連以外でも、日本車の先進技術データなどに注目が集まっているのは、先にEDR関連項目でも述べた理由と同様にアメリカ車の次にシェアを持つ日本車に焦点が当てられてきていること、そして日本車の先進運転支援システムが世界においても優秀であることの2点が理由と考えられます。
本年はコロナウイルス(COVID-19)の影響から、BOSCH社CEOを含む、予定されていたプレゼンターが参加できなかったり、運営から注意勧告が出たりと異例ずくめの開催となりましたが、講演内容としては、昨年よりも日本車の機能に焦点が当たることが多かったため実務に、またEDRデータのみではなく、他のデータも使用した統合的な車両事故鑑定へ向かっている内容で、当社が向かう方向性に間違いはないと実感いたしました。
今後も事故解析の世界的な潮流に乗り遅れることなく、プロフェッショナルとしての資質を高めるため、更なる知識の習得そしてハイレベルでの統合的な運用を継続していきます。
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